登録者数39万人超のYouTubeチャンネル「Kuro―北国の暮らし」から生まれた書籍『北国の暮らし 今を豊かに生きる家しごと庭しごと』（KADOKAWA）。動画に無言で登場する、Kuroさんの67歳母と92歳祖母が、この本で初めてご自身の暮らしや秘訣について語っています。庭仕事に精を出し、日々の暮らしを慈しむ「始末のよい暮らし」は、まさに未来への種まき。北国の大地で培われた、穏やかで豊かな暮らしのヒントが詰まっています。日々の生活をより健やかに過ごすための知恵を、ぜひ本書から見つけてみませんか。
※本記事はKuroによる書籍『北国の暮らし 今を豊かに生きる家しごと庭しごと』から一部抜粋・編集しました。
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夢中になったら、止まらない
園芸店はなんとなく始めた感じです。資本金もおこづかい程度でした。家族に「園芸店をします」と宣言した記憶もありません。
お店経営は初めてでしたが、商家の娘なので、何をすべきかはわかっていました。でも、園芸に関しては何も知らなかったので、できることは何でもやりました。近くの短期大学の造園林学科の社会人枠の科目等履修生になり、植物全般の知識教養を深め、北海道主催の起業家セミナーも受講しました。ハンギングバスケットマスターの資格も取得しました。興味のある人がいたら会いに行き、進みたい方向があると、まっすぐ向かっていきました。
世の中がガーデニングブームだったこともあり、園芸店の経営は順調でした。口コミが広まり、町内だけでなく、近隣の市町村や札幌から、わざわざ足を運んでくださる人も増えていったのです。やることなすことうまく運んで、楽しくて仕方がないという毎日が続いていました。
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「４人の子持ち、田舎、素人」の専業主婦が、園芸店を起業したのは珍しかったのだと思います。地元紙をはじめ取材も多く受けましたが、どの取材記事でも「主婦の〜」が枕詞のように付いていました。いつか庭を作る仕事をやりたいと思い、取材で「夢はガーデンデザイナーです」と答えると、それがそのまま見出しになった記事もありました。でも、その頃は花やハーブの苗の生産や販売に奮闘し、自分の園芸店のあるべき姿を模索していたような気がします。
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情報源のひとつだった園芸関連の書籍。
園芸店をオープンして２年後の１９９７年９月。ハーブ生産農家の大先輩に誘われたイギリスの生産者巡りの旅は、忘れられない旅になりました。４人の子どもを置いて、10日間も家を留守にするなんて到底できないと思いましたが、ハーブに精通した農家さんに誘ってもらえるなんて二度とないチャンスかもしれません。行きたい気持ちをあきらめることはできず、夫の協力も得て、出かけることにしました。
初めてのイギリス旅は、見るものすべてが私にとっては衝撃でした。
９月だというのに美しいガーデン、花や苗木を生産し販売を行うナーサリー、多くの草花が理路整然と並べてある園芸店、ガーデンやショップに併設されている洒落たカフェなど、目にするすべてに魅了された私の中には、自分の園芸店の将来の姿がはっきり浮かんできたのでした。
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園芸大国イギリスへの旅で、かなえたい夢がひとつ増えました。
お母さんは変わりもの。気がついたら始まっていた 姉より
母が店を始める少し前から、うちの庭には珍しい野菜やハーブが出現し、食卓にも絵の具箱をひっくり返したようなカラフルな野菜が出るようになりました。「お母さん、変わってるね」と友だちから言われることも増えてきたと思ったら、ある日突然、家の前でお店をオープン。あのときはさすがにびっくりしました。
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