「認知症だった母はなぜ、『あの日』雨が降る中、ひとりで外へ出たのでしょうか。その後風邪をこじらせて亡くなりました。葬儀に参列した知人の『お前の母ちゃん、雨の降る日にお墓で見たわ』という言葉にカレンダーを見た私たちは...。涙が止まりませんでした」
■地元でも有名なおしどり夫婦だった両親
「わし、お前の母ちゃんが、雨の日にお墓におったんを見たかもしれん」
続きを読む
その人は用水路の水が雨で溢れていないかと山手に入ったときに、お墓の近くで母のような人影を見たのだそう。
「人の気配がしような気がしたけんど、雨やし気のせいかと思っとったんじゃ......。もっとよう見とったら、こんな早う逝かんですんだかもしれん」
悔やむようにそう言ってくれたのです。
私はそんなことはない、きっと寿命やったんよとその人に言いながらも『もしそれがほんまやったら、なんで墓に......?』と考えてはっとカレンダーを見ました。
続きを読む
母が雨の中外に出てしまった日。
その日は10年前に死んだ父の命日でした。
「親父の命日やったんじゃ......」
そう呟くと、母のお茶飲み友達だったお隣さんが納得したように話します。
「そう言えば、『お父ちゃん、今お墓に一人おるんよ』って寂しそうに言いよったわ」
父が亡くなったとき、私は墓を建て直し、ご先祖様と父で二つの墓石を用意しました。
確かにその時、父の遺骨一つだけを他の遺骨と分けて入れたのです。
続きを読む
母は私にそのことを言ったことはなかったのですが、新しい墓石に父の遺骨一つだけ入っていることを気にしたのでしょう。
私の両親は地元でも有名なおしどり夫婦でした。
父が亡くなったときも親戚たちの前で気丈に振る舞っていた母ですが、本当は寂しかったのかもしれません。
母は認知症が進んでも父のことは覚えていて、雨の中命日参りをしていたのだな...とその場の全員で涙しました。
続きを読む
現在は父と母、2人がそのお墓に寄り添うように入っています。
※健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。
記事一覧に戻る