「テイクアウトのすし店でパートとして働いていたときの話です。太巻き作りが苦手な私にとって、緊張するお客さんがいまして...。その方は、不機嫌な様子で毎日太巻きを買いにくるマダム。ある日、いつも作り置きしている太巻きが売り切れてしまいました。そんな時、例のマダムが買いにきて...!」
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■「誰がこの太巻き作ったの?」女性からのクレームに...
あれは9年前(当時35歳)のこと、私はテイクアウトのすし店でパートをしていました。
こぢんまりとしたお店で、従業員は店長とベテランのおばさん、私、高校生の4人でした。
私はすし司店の経験がなく、1から握り、バッテラ、いなり、細巻き、太巻きの作り方を習いました。
長く続けていると得意メニューも出てきますが、作るのが苦手なものも出てきます。
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私の苦手なメニューは「太巻き」でした。
しゃりと具の配置、握る力加減、そして刃の形が丸みを帯びている「すし切り包丁」の使い方が、とても難しかったです。
そんな私にとって、一番緊張するお客さんがいました。
毎日のように買いに来てくださる「太巻きファン」の老婦人(推定年齢70歳)です。
いつも不機嫌そうな顔をしているその老婦人が来店されると、とても緊張してしまう私。
太巻きは注文を受けてその場で作ることもあったのですが、私は落ち着いてつくれるよう、その老婦人の来店時間前に「作り置き」するのが日課になっていました。
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ですがある日、恐れていたことが起こりました。
太巻きが大量に売れてしまったのです。
そして、当然のようにその日も老婦人が来店されました。
当然在庫はなく、その場で私が作るしかありません。
恐る恐る太巻きを作る厨房の私を...小窓から覗き込む老婦人。
緊張MAXでした。
そして、やはり...というか、老婦人からクレームが入ったのです。
私の作った太巻きが「汚い」と。
すぐさま店長が私の代わりに謝りに行ってくれたそうです。
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しかし老婦人は怒鳴りつけたりはせず、私に「『落ち着いて』と伝えて」と言ったそうです。
クレームが入ったというのに、なぜか店長は私を怒りませんでした。
「絶対にできるから頑張ろう!」
そう励ましてくれました。
とはいえ、老婦人にこれからどんな顔で会えばいいのだろう...と悩んだ私。
でも答えを出す暇もなく、次の出勤日は訪れます。
そしてもちろん、老婦人もご来店されました。
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その日はベテランのおばさんと私のシフトでした。
事情を知るベテランのおばさんが、すぐさま先日の「汚い太巻き」を老婦人に謝罪して、私も後ろから謝罪。
そしてベテランおばさんが太巻きを差し出すと「これは彼女が作ったの?」と言って私を指さしました。
「これは私が作りました」とベテランおばさんが言うと、驚きの言葉が飛び出しました。
※健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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